EM農業/土壌微生物叢の重要性について考える

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2015/1/2 13:20 | 最終変更
go  管理人   投稿数: 125
「ヒトは微生物たちによって生かされている」とは日経サイエンス誌「特集マイクロバイオーム」の一節である。
食物の消化だけでなく、酵素生成や免疫までもがマイクロバイオームの働きによるものであることは、今や常識となってきた。
農業においても、土壌微生物叢(マイクロバイオーム)が健全でなければ安全・安心・健康に役立つ野菜・果物はできない。


1.慣行農法、有機農法、EM農法の微生物活用

EM(有用微生物群)の積極的な利用による土壌微生物叢(そう)の考え方を説明する前に、
慣行農業、有機農業、EM農業について概観してみる。

(1) 慣行農業 (化学肥料と農薬を多用)

 [肥料] 化学肥料、完熟堆肥や微量要素肥料を使う人もいる
 [作付け] 主に単作、連作することもある
 [病害虫対策] 農薬散布(殺虫剤・殺菌剤)
 [雑草対策] 除草剤、ビニールマルチ、刈取り
 [連作障害] 土壌消毒、天地返し、客土
 [生産物] 見た目きれい、虫食い無し、えぐ味、日持ちしない、残留農薬に不安あり
 [土壌微生物] 腐敗(分解発酵)菌、病原細菌
 [補足]・化学肥料の継続使用により土壌微生物は(有機物の投入が少ないために)、
     悪玉菌(生の有機物を投入するとすぐ腐敗する)や病原菌などが優勢となるため害虫が発生しやすいく、
     そのために生ざまな農薬を施用せざるをえなく、ますます土壌微生物は貧弱になる。  
    ・土壌微生物叢を豊かにする考えななく、研究もされていない、
    ・根から吸収できる養分は分子の小さい無機態である、とする考えが基本にある。
    ・収量は多い
    ・化学肥料や農薬を半減した「特別栽培」の農産物もある  

(2) 有機農法 (化学肥料や化学合成農薬は一切使用しない)

 [肥料] 畜産堆肥(完熟元肥・半熟追肥)、緑肥、液肥、ボカシ肥
 [作付け] 少量多品種、輪作
 [病害虫対策] 輪作、混作、天敵益虫、天然素材忌避液、防虫ネット、耐病性品種
 [雑草対策] 手作業、マルチ(ビニール、ワラ、刈り草)、アイガモ(水田)
 [連作障害] 輪作、混作、
 [生産物] 見た目良くないものもある、自然な味、日持ち良い、身体によい、虫食いも混じる
 [微生物] 完熟たい肥、半熟堆肥づくりに腐心、微生物資材を利用することもある
 [補足]
    ・生産物に「有機栽培」を表示するためには厳格な栽培管理などの規定がある。

(3) EM農法 (農作物の成長に不可欠な微生物叢の高度活用)

 [肥料] 基本は「有機農業堆肥+EM活性液散布」、EM発酵半熟堆肥、EM利用畜産堆肥(半生熟性)、
     EMボカシ肥(慣行農法からの転換期)
     生ごみ発酵堆肥(家庭菜園)
 [作付け] 単作や連作が可能(輪作を推奨)
 [病害虫対策] (慣行農法からの移行直後の病原細菌抑制対策)EM発酵ボカシ+EM活性液、
      土壌微生物層が出来上がれば病害虫発生は激減、
      適時のEM活性液散布、天然由来の忌避材散布、有機農業と同じ
 [雑草対策] 生刈り草マルチ(+EM散布は有機追肥効果)、有機農業と同じ
 [連作障害] 無し(土壌微生物叢が完成の場合)、適時な輪作が望ましい、有機農業と同じ
 [生産物] おいしい・からだに良い、日持ちが良い、高値で売れる、虫食いは激減
 [微生物]
   ・発酵合成型(発酵菌+合成菌)微生物叢の土壌を志向する。
    発酵菌:乳酸生成菌、酵母菌、放線菌
    合成菌:光合成細菌、窒素固定菌
   ・これらは互いに共生しあって豊かな微生物層叢を形成し、植物の成長を促進する物質を産生する。
    光合成微生物:光エネルギーとCO2から糖を合成したり、硫化水素や有毒アミンなども分解して、
           他の微生物たちや植物に栄養を提供する。
    窒素固定菌類:空気中の窒素を固定して、酵母菌類や植物に栄養を供給する。
    乳酸生成菌類:光合成細菌や酵母菌から栄養をもらい病害虫抑制物質をつくる。
    酵母などの有用菌類:光合成細菌や他の微生物から栄養をもらい、整理活性部室などを産生する。
    放線菌類:抗菌物質を作り、病原気の殺菌または増殖抑制したり、植物の免疫を高める。
      ( 詳しくは「2.EMによる微生物叢の形成」にて説明する)
   ・植物の根からの養分吸収に関しては、
    慣行農法では、無機態(元素に地近い分子)しか吸収できない、とする古典的な考え方であるのに対し、
    EM農法では、糖や低分子のアミノ酸などのタンパク質類、ビタミンなどの生理活性物質も吸収できる、
    とする考えに立ち、土壌微生物や菌根圏微生物を豊かにすることを主眼としている。
     (人間の健康は、今では腸内細菌叢の豊かさによって保たれているという常識と同じ考えである)    


2.EMの活用による土壌微生物叢の形成

(1) EM栽培と慣行栽培の土壌微生物叢の取り組み方の違い

慣行農業(慣行栽培)とEM農業(EM栽培)の土壌微生物叢に対する考え方は大きく異なっている。
 ・慣行栽培では、化学肥料および合成農薬の施用を主体とするので、土壌微生物叢の認識は希薄であるのに対し、
 ・EM栽培では、農作物と土樹微生物群との良好な共生(マイクロバイオーム)を基軸においている。
 

このように対比してみると、概念や目的、栽培技術、環境保全、生産者のメリット、生活者のメリットなど、
慣行栽培の未来にさまざまな難し局面が予想されるが、EM栽培の未来への可能性は一目瞭然である。
しかし、EMをパラパラと撒くという安易な考えでは、収量の向上も病害虫対策も品質の向上などに
成果は期待できない。植物と微生物群の良好なマイクロバイオームづくりにノウハウを蓄積する必要がある。

(2) EMの発酵培養技術と活用技術

 ・EMを使う基本は、微生物が休眠状態になっているEM1原液をそそのまま使うことはせず、
  糖蜜(サトウキビ由来の廃糖蜜)などで発酵培養(1次培養)のEM活性液を作ることから始まる。
 ・良質の一次培養液「EM活性液」ができれば、更にニ次まで培養できるが、三次培養は微生物群が偏るため勧めない。
 ・EMボカシは、米ぬかを良質のEM活性液発酵液で嫌気発酵させるパワーのある土壌改良資材である。
 ・このようなEM培養技術は、原液を数千倍に殖やし、農地や葉面への散布は更に数百倍に希釈する。

 ・慣行農法で腐敗型に疲弊した土壌や連作障害のある土壌は、EMボカシ+EM活性液等の深耕で、
  初年度から土壌が改善できる。

なお、畜産から発生する堆肥は、家畜にEMを施用する(飲ませる、食べさせる、畜舎に散布する)ことで、
悪臭は抑えられだけでなく、良質の半熟有機堆肥として(熟成期間大幅短縮し切り替えなしで)使うことができる。
放射能に汚染された牧草地では、EM化スラリー液肥+EM活性液の散布によって作られた牧草によるサイレージは、
放射能の吸収が大幅に抑制され、肉牛や乳牛への蓄積がなく、牛乳は基準値を大幅に下がったという事例もある。

(3) 発酵合成型土壌における農作物と微生物叢との共生関係

 この図は、EMによって形成された土壌微生物群の共生関係を表したものである。
 ・有機物は、発酵菌類によって、他の微生物や植物に有用で利用可能なな有機物に分解される。
 ・特に光合成細菌は微生物叢の中核的な役割を果たしている。
    ・腐敗有機物や有毒ガス類の分解
    ・光合成による糖の合成、アミノ酸の生成
    ・産生された有機物質は、他の微生物のエサになる、
 ・光合成細菌は、腐敗型土壌で腐敗菌とも共生することができるが、M活性液の乳酸生成菌や酵母菌類の働く環境では、
  盛んに増殖し活性化して発酵合成型土壌の中核となるものである。
 ・光合成細菌は、太陽エネルギーや二酸化炭素から糖などの有機物を作り、窒素固定バクテリア類(合成菌)と相まって
  植物に必要な肥料成分を直接または間接(他の微生物系を経由)に作り出してくれる。

 EMによる土壌微生物群の働きの詳細は、健康宣言21号健康生活宣言22号および健康生活宣言24号 をご覧いただきたい。


3.国が主導する慣行農業への雑感

(1) 慣行農業について
 ・戦後の数々の農業政策のもと、慣行農法(化学肥料・農薬・機械化等)の農業技術に進展によって、
  食糧の安定供給の役割は果たしたものと評価できる。
 ・社会が成熟しライフスタイルの変化などにより、環境と健康意識が高まり、有機農業への関心は高まっはいるが、
  大半の農家は有機農業に切り替えることは出来ず、これからも慣行農業は続くものと思われる。
 ・しかし有機農畜産物の人気は、健康志向やグルメ志向や生産者たちとの交流などの「癒しの価値」の観点などから、
  ますます高まってきており、新たに農業を始めたい若者たちは慣行農業に夢を馳せることはないと思われる。
 ・EMによる農業や畜産は、環境・安全・安心・おいしいし、生産者と都市生活者と交流や産直は、
  ネットやスマホの普及とともに、ますます市民権を確立できるものと考える。  

 ・世界主要国における農薬使用量は、欧米に比べて日本はダントツだったが、中国は急激に上昇している。


(2) 放射能汚染について
 ・北関東や南東北は、日本の食料基地でもあるが、放射能汚染によって、農畜産物への潜在的な不安は治まっていない。
 ・国の農畜産に対す放射能汚染対策は、極めて限定的であり、除染や減容によって移動した放射能の処理や再拡散の
  不安は全く解決されていない。
 ・放射能汚染に対し、慣行農法では全くの「無力」だが、EMによる農畜産では、放射能汚染から食を守ることが
  できるばかりか、農地の放射能そのものをも低減することができ、各所でその報告が増えてきている。


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● 慣行農業によって使用する農薬は、個々には害がないレベルだし残留性も薄れてきていると言われてはいるが、
生活者の食への不安は、放射能汚染が加わることによって、ますます健康への不安が懸念される。

● 参考までに、主要国のガン死亡率をみると、主要国は安定または低下しているのに対し、
日本はものすごい勢いで伸び続けている。

ガン死亡率の高さは、農薬の使用量と因果関係にあるとは言うつもりはないが、食の問題であることは間違いない。
 ・食品に含まれる、残留農薬、合成着色料・甘味料、トランス脂肪酸(=マーガリン、主要国では製造販売禁止)
 ・医療による放射線被ばく(日本のCT所有率はダントツ)、喫煙など・・・

● 食は、生きるためには摂り続けなければならない食糧ではあるが、安全・安心だけでなく医食同源でもある。
慣行農業は国民に生きるための「食糧」を供給してきたが、成熟しつつある社会の生活者や病気気味な家族を持つ
主婦たちは「健康な食」をますます強く求めはじめている。
有機農産物やEM農畜産物の役割は、安全安心な食の面だけでなく、
有機農畜産農家たちとの交流は、
ストレスの多い都市生活者を心から「癒す役割」や子どもたちの「健全な心の教育」にも繋がっていくなど、
その役割と価値は、ますます重要になっていくものと考えたい。

4.比嘉教授の日本の農業の再生論

比嘉照夫氏の緊急提言 『 甦れ! 食と健康と地球環境 』をご覧いただきたい。

 第21回 食と健康、環境を守る農業の未来像(1)10/02/17
 第22回 食と健康、環境を守る農業の未来像(2) 10/03/10
 第23回 食と健康、環境を守る農業の未来像(3) 10/03/30
 第24回 食と健康、環境を守る農業の未来像(4) 10/04/147
 第58回 ついに明確となった福島のEM有機農業への道筋 12/06/13
 第80回 EMによる創造的な農業生産(1) 14/03/04
 第81回 EMによる創造的な農業生産(2) 14/04/03
 第82回 EMによる創造的な農業生産(3) 14/05/02
 第83回 EMによる創造的な農業生産(4) 14/05/02
 第84回 EMによる創造的な農業生産(5) 14/07/03




 
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